タネと土と変態的農法? 〜自然栽培というロマン〜

2025年6月10日(木)雨、座学の3限目は「有機農業経営論」。
今回の講師は、富士見市で自然栽培を実践されている関野幸生さん
自動車整備士から農家に転身、そして今や「無肥料・無農薬・自家採種・連作」の
四拍子を揃えた“変態的農家(誉め言葉)”です。

書籍が人生を変えた!?
関野さんが自然栽培に目覚めたきっかけは、なんと一冊の本。
それがこの『野菜つくりと施肥』(農文協)。

内容はタイトル通りに見せかけて、実はものすごく本質的な一冊。
「NPK(窒素・リン酸・カリウム)よりも、植物にとって大切なのはCOH(炭素・酸素・水素)なんだよね」
という目からウロコの視点が詰まっており、関野さんの農業観を180度変えたとのこと。
本のタイトルに“施肥”とあるけど、「肥料から離れること」が真のテーマだったのかもしれません。

土よりタネより生命力
関野さんの信念はシンプル。
「土は作らない。植物が生きてる限り、そこはもう“育つ場所”なんだから。」
そして、自家採種によってタネがその土地に馴染み、やがて肥料にも農薬にも頼らない野菜が育つようになる。
その完成形まで7〜8年かかったというから驚きです。

連作は敵じゃない、むしろ味方
トマト、ナス、ジャガイモ――どれも毎年同じ場所で育ててOK。
一時は枯れたりもしたけれど、粘り強く続けるうちに連作障害が消えたというから、もはや“土との友情”レベル。
「同じ作物を植え続けると、その作物に必要な微生物が土に集まってくるんです」
という話には、「え、そんなRPGみたいなことある?」とツッコミつつも、妙に納得。

F1種と固定種
現代農業で主流のF1種は、形も味も揃っているけど、種はとれないし味は薄め。
一方の固定種は、形はバラバラだけど香りと味が濃く、タネも代々つなげられる
「外食産業では“味がしない野菜”の方が好まれるんですよね」
という衝撃発言には、食の世界の奥深さと切なさを感じました…。

脇芽にも意味がある
トマトやナスの「芽かき」、自然栽培ではやりすぎは禁物。
脇芽が作るホルモン“オーキシン”が、根の発育を助けているそうで、芽を取りすぎると根も細くなってしまう。
「ナスは一切取らない」という大胆なスタイルも紹介され、思わず「まじか…!」と声が漏れました

自然に委ねる強さ
肥料も農薬も使わない。
でも野菜たちは、たくましく生き、育ち、そして味わい深い。
その背景には、タネを信じ、土に委ね、時間をかけて微生物と共生してきた農家の粘りと工夫がありました。
関野さんの言葉に勇気づけられた一日。
関野さんの自然栽培は、有機農業のさらにその先を行く挑戦に満ちた世界。
自分にはまだ届きそうにありませんが、まずは有機農業の基本を大切にしながら、一歩ずつ積み重ねていこうと思います(焦らず、輪作から…)。